重課算税に関する裁決事例

「最新 未公表裁決」として意図的に検収書に虚偽の検収日を記載したとは認められないとされた事例が週刊税務通信No.3591に掲載されていました。

 

【事案の概要】

3月決算法人のX社は、自社の設備工事について手書き等により作成されていた既存の図面をCADソフトを利用して電子データ化する工事を外部業者に複数発注していた。

見積仕様書等によると、製本ファイルを受領し、それとは別にCADデータをCD-ROM等の外部記録媒体に保存して、その外部記録媒体を受領することによって検収完了となるとされていた。

X社は3月20日に製本ファイルを受領、タイトルの名称変更等、軽微な訂正を依頼したため、訂正後の製本ファイルは事業年度末(3月末)までに受領できていなかったが、検収書に同日の日付を記載して検収処理した。その後、X社は本件工事に係るCADデータが保存された外部記録媒体を6月末頃に受領していた。

調査官は、X社が事業年度末までに製本ファイル及び外部記録媒体を受領していないにもかかわらず、虚偽の納品日を記載し、意図的に当該事業年度の損金の額に算入したとして重加算税を課した。

【審判所の判断】

審判所は、3月20日に受領した製本ファイルにおいて工事の目的であった電子データ化がされていたこと、当該工事以外の類似の工事の検収日についても記録媒体の受領日以前になっていたこと等から、故意に事実をわい曲したとは認められないとした。

【実務へのフィードバック】

税務処理の誤りについて、重課算税の対象と調査官に言及されるケースは少なくありません。

市場調査レポートの作成及び当該レポートの報告会開催までを契約上のサービスとしていたものの、報告会を電話及びメールで済ましていたケースで同様の指摘を受けたことがあります。

「事実を仮装し」たかどうかの判断のメルクマールは、「故意に」「事実をわい曲した」かどうかということになりますので、納税者・税理士としては、事実関係や過去の経緯を含め丁寧に疎明を行うことにより、毅然とした態度で無用な指摘については反論すべきと考えます。