組織再編成の行為計算否認を巡る事件で国勝訴(東京地裁)

税務通信3567号に「東京地裁 組織再編成の行為計算否認を巡る事件で国勝訴」が掲載されていました。

 

「概要」

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X社が実施した合併のイメージ
  •  自動車部品等の製造・販売を行うX社は、①B社を新設した上で、②完全子会社A社の従業員をB社に転籍・A社の棚卸資産をB社に譲渡、X社を合併法人・A社を被合併法人とする吸収合併(適格合併)を実施した。
  • 被合併法人であるA社には未処理欠損金額が11億円あり、適格合併によりX社が未処理欠損金額を引き継ぎ、X社の損金の額に算入した。
  • これに対して国が、未処理欠損金額をX社の損金に算入することは、X社の法人税の負担を不当に減少させる結果となるとして、法人税法132条の2を適用して更正処分を行ったもの。

 

組織再編成に係る行為計算否認規定とは】 

法人税法132条の2(組織再編成に係る行為計算否認規定)は租税回避目的で行われた組織再編については税務署長の権限において課税することができることを定めた規定です。

 

組織再編成に係る行為計算否認規定にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの(不当性要件)」について、平成28年最高裁判決で示された意義が下記の2点です。

  1. 当該法人の行為又は計算が、通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づいたり、実態とはかい離した形式を作出したりするなど、不自然なものであるかどうか
  2. 税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか

本件は、A社の従業員・棚卸資産をB社に引き継がせて、空っぽになったA社を合併していることから、X社はA社の未処理欠損金のみを引き継いだと指摘され、「税負担の減少以外に合併を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するとは認め難い」とされ、国が行った更正処分を適法であると判断されました。

 

支配関係が5年超だからと安易に適格合併で欠損金額を引き継ぐといった行為はリスクがあるため、組織再編税制が通常想定している、事業の移転及び継続という実質を備えた組織再編であることが必要と考えられます。